パラレルワークが切り拓く未来。教育×スタートアップの融合が生む革新

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PROFILE 齋藤 恵太  Design Dept./Chief Design Officer 2013年にグッドパッチへ入社し、クライアントワークを通じて多数のプロダクトを支援。App Storeのファイナンスやヘルスケアカテゴリにて1位を獲得、1,000万DL超のサービスに関わり、数々の受賞歴を持つ。2018年にはフルリモートのデザインチーム「Goodpatch Anywhere」を立ち上げ、600名超の組織へと成長させる。2023年に株式会社ノーモアマンデーを設立。新潟県庁にてデザイン経営担当参与、デジタルハリウッド大学非常勤講師、株式会社MGNETにてCDOなどを務める。

デザイナーと新規事業を経ての「独立」という選択

ーー現在に至るまで様々な経験をされていますが、どのような道のりだったのでしょうか?
Web制作会社で約8年間勤務した後、株式会社グッドパッチに転職しました。いくつかのプロジェクトをデザイナーとして経験後、管理職か新規事業担当かという選択肢を会社からいただき、悩んだ末に新規事業を選択しました。それが2018年のことで、立ち上げた事業は同社の事業の1つである「Goodpatch Anywhere」です。
会社の仕組み・商流の整備・採用や組織構築など、仲間と共にゼロから構築し、事業グロースに向けて邁進する日々はとても充実していましたが、Goodpatch Anywhereがパラレルワーカーの可能性を最大化する事業だったこともあり、気づけば自分自身もパラレルワーカーとしてキャリアを構築したいという気持ちが大きくなったため、昨年の夏に退職しました。
Goodpatchのことは今でも大好きですが、私は「特定の会社にキャリアの全てを捧げる」という働き方とは違うあり方を探したいという気持ちが強くありました。「この会社が好きです」と言いながら、どこか、心の底に小さな嘘を感じているような生き方はしたくなかったんです。 正直な気持ちで仕事に向き合うため、1つの組織に縛られるのではなく、複数のプロジェクトに関わるパラレルな働き方を選びました。その結果、現在Goodpatchとは外部から支援する関係性を継続しています。

運命を変えた一つの記事。小笠原との出会い

 
ーー小笠原との出会いを教えてください。
クロステック・マネジメントの責任者である小笠原のことは、最初はメディア記事を通じて一方的に知りました。記事には「会社と正社員雇用ではその関係性が不健全な状態になってしまうことがある」と書かれており、まさに私自身も感じていた問題を同じように感じている人がいるのだと知り、とても心強く感じました。会社の指示に従うことが当たり前になり、「会社のせい」だと文句を言うようになり、気づけば雇われる側が主体性を失った組織になっている。そうしたことが起こってしまう構造自体をなんとか変えていきたいと思い始めていた時期だったためです。
その後、Goodpatch Anywhereを立ち上げて半年ほど経った頃、たまたま小笠原が関わるプロジェクトの依頼がGoodpatchに来たのをきっかけに直接お会いすることに。実際に話してみると記事の通り共感できる点が多く、意気投合した結果プロジェクトも一緒に進めさせていただきました。その後、このような思想に基づいた事業としてGoodpatch Anywhereを一定成長させることができたタイミングで例の記事と同じメディアでアンサー記事(https://doda-x.jp/article/5137/)を書いてもらうことになり、嬉しい気持ちになったことを覚えています。
 
ーークロステック・マネジメントにジョインされた経緯についてお聞かせください。
2022年に小笠原より「教育分野に興味はないか?」と声を掛けてもらい、翌年に京都芸術大学の理事長とAIやデジタル教育の可能性についてディスカッションする機会をいただきました。ChatGPTがまさに登場してきたタイミングで、議論を深める中で教育の未来を大きく変える可能性を感じ、学園全体としてがDXに投資をするという先進的なスタンスを持っていたため、瓜生山学園(京都芸術大学)のCDO(D=Digital)として参画しました。
その関わりの中で「学校法人×スタートアップ」という新しいアプローチに挑戦するために創り始めたチームがクロステック・マネジメントです。学校法人は通常年数%の成長を目指すものですが、我々がスタートアップのマインドで目指す目標はより大きな成長が必要になります。反面、その成長に向けた投資をする難易度が非常に高い。
だからこそ、スタートアップのカルチャーと、安定した収益基盤から生まれる投資余力を持つ教育機関を掛け合わせで、全く新しい形の教育事業が生まれる可能性があると考えました。「学校法人の安定性」と「スタートアップの成長戦略」を融合させ、これまでにない教育の形を実現したいと考えています。

学校法人×スタートアップ×デザイン―新たな価値創造へ

 
ーークロステック・マネジメントではどんなことをされていますか?
学園のCDOを担いながら、クロステックマネジメントでは、デザインチームの責任者を担当しています。チーム設立以降、初期はアジャイルに色々なプロダクトの方向性を試したためデザイン専門の部署は存在していなかったのですが、プロダクト開発が進む中でデザインを専門とするチームの必要性が明確になったたため、今春から新たに「Design Department」を立ち上げ、そこの管掌をしています。クロステック・マネジメントのDesign Departmentでは、デザインシステムを初期から構築している点が大きな特徴です。通常は複数のプロダクトが動き出してからデザインシステムを整備することが多いですが、今回は初めからシステム設計に取り組んでいます。このアプローチは比較的珍しく、今後の強みになると考えています。
 
ーーDesign Departmentが目指すものとは?
Goodpatch Anywhere時代は「デザインの民主化」を目指し、地方やフルリモートのデザイナーが活躍できる仕組みを構築しましたが、今後はAIの進化により「デザイナーのはたらき方」自体が変わる可能性があります。これからのデザイン組織のあり方を再定義し、より柔軟で革新的なチーム作りを模索していく必要があると思っています。クロステック・マネジメントの持つ「学校法人×スタートアップ」という独自の強みを活かし従来の型にとらわれず、これまでになかった「デザインの価値」を追求し続けていきます。
 
ーー新しいツールや働き方を導入する際に意識していることや、組織にどのような変化があったか教えてください。
新しいツールや働き方を取り入れることで、環境の変化が人や組織を成長させると考えており、例えば以下のようなツールを既に導入済です。
  • Notion(情報共有・ナレッジ管理)
  • Slack(コミュニケーション)
  • FigJam(デザインディスカッション)
少し意外だったのは学校法人の職員の方々がNotionを非常にスムーズに活用している点です。スタートアップの人材よりも、むしろ日常的に丁寧な文章を作成する習慣がある職員の方の方が、Notionとの相性が良いという発見もありました。
また、ツール導入は単なる業務効率化にとどまらず、組織文化の変革にもつながっています。ツールが変われば、仕事の進め方やコミュニケーションの取り方が変わり、それによって組織の考え方自体が変わっていきます。私はこれを「ツールを変えることは、言語を変えることに似ている」と考えています。言語が変われば、行動や思考が変わるのと同じように、ツールを変えることで新しい働き方が生まれるのです。

自社開発の力が生む、加速する面白さ

※補足ですが、最初の写真だけ実物で、それ以外はすべてAIで生成した画像になります。
 
ーークロステック・マネジメントで働く魅力は何ですか?
クロステック・マネジメントの魅力は、京都と芸術というブランド力を活かし世界に挑戦できる環境に加え、教育機関ならではの「試しながら作る」アプローチができる点にあります。
通常のEdTechはサービスを開発したら、それを導入する学校を探し、サービスのフィードバックを受けられるようにするなどの関係を構築するところから始める必要があります。また、 一般的な教育機関ではSIerやベンダーにシステム開発を委託するためサービスの進化のスピードが遅くなりがちですが、私たちは学生や職員と共に当事者として開発と活用を繰り返しながら最適な形を追求できるため、試行錯誤と進化のスピードを加速させることが可能です。最近では、学生と共にAIエージェントを活用するR&Dを、AIスタートアップと共同で実施したりもしています。
こういった取り組みの中で、ワークスペースSaaSのNotionさんが学園の取り組みに興味を持ち、国内初の戦略的パートナーシップを締結することができました。CEOが実際に本学へ訪問したり、デザイン責任者と直接対話する機会を得られたりしており、国内の他スタートアップと比較しても、非常に先進的な挑戦ができる点が魅力だと思っています。