働くを再定義。変革のフロントで描く未来の組織像

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PROFILE
金 麗雄 Director’s office COO 2004年に同志社大学を卒業後、楽天株式会社に入社。「楽天イーグルス」創設時に球団社長補佐兼事業本部長補佐として立ち上げを経験。2008年に退社後、株式会社リエゾンを創業。さらにキラメックス株式会社にCOOとしてジョインし、オンラインプログラミングスクール「TechAcademy」の事業を成長させ、バイアウトを実現。バイアウト後も4年間にわたり代表取締役副社長を務め、国内最大規模のスクールへと導いた。2019年より株式会社レット執行役員、2024年からクロステック・マネジメントのプロジェクトに参画。
 

楽天イーグルス立ち上げから教育事業の最前線へ

──現在に至るまでのキャリアと、起業を志した背景について教えてください。
2004年に同志社大学を卒業後、楽天に新卒入社しました。当時は「ITベンチャー」という言葉も今ほど一般的ではなく、楽天もまだあまり知られていませんでしたが、将来は起業したいという思いがあり、成長産業であるインターネット業界を志望していました。実は僕自身、在日コリアンというバックグラウンドもあって、親戚や周囲には会社勤めをしている人が少なく、みんな自分で商売をしていたんです。だから自然と「いつかは自分も起業したい」という思いが芽生えていました。楽天に入社後3ヶ月ほどで、楽天イーグルスの立ち上げプロジェクトにアサインされ、球団社長補佐 兼 事業本部長補佐として、立ち上げから2シーズンの運営まで携わりました。その後、2008年に楽天を退社し、起業の道へ。 株式会社リエゾンを立ち上げ、続いて楽天時代の後輩とキラメックス株式会社にて取締役として事業の立ち上げ。複数のサービスを経て、オンラインプログラミングスクール「TechAcademy」を2016年に株式会社ユナイテッドにバイアウトしました。バイアウト後も4年間代表取締役副社長を務め、累計受講者数3万人超のスクールへと成長させることができました。 その後、食品のECサービス「レット」の立ち上げに関わる一方、TechAcademyで「スタートアップの一巡」は一度経験したこともあり、福岡でラジオ番組「ビールとクワダテ」の運営やプロラグビーチームのアドバイザーなどスタートアップ以外の活動にも時間を割いていました。
 

理念に共鳴し──教育変革への挑戦が描く、新たな地平

──クロステック・マネジメントへのジョインには、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
現クロステック・マネジメント代表の小笠原に声をかけてもらったのがきっかけで、クロステック・マネジメントにジョインしました。小笠原とはawabarができた当初よりスタートアップ界の先輩として相談にのってもらっていました。TechAcademyと小笠原が関わっていたTellusで一緒に仕事をしたこともあります。以前、小笠原が福岡に住んでいたことがあり、実は「ビールとクワダテ」というラジオ番組はその繋がりでスタートした経緯があります。 そんな中クロステック・マネジメントのプロジェクトの話にも自然と興味を持ち、お手伝いすることになったのがスタートです。
 
──手伝ってほしいと声がかかって、どのようなところに魅力を感じましたか?
再度また「教育に関わることができる」ことに魅力を感じたのは大きいですね。TechAcademyではオンラインでプログラミングを教えるスクールに、数十万円の受講料を払って、キャリアの転機を目指して真剣に取り組む受講生が多いんです。教育の力で人の人生を変えられる可能性に、「教育って面白いな、やりがいがあるな」と感じていました。
振り返ると、楽天イーグルス時代にも同じような感覚があったんですよね。球団ができたことで仙台の街が変わっていった。人の喜びや熱量がまちの空気ごと変えていく、そのダイナミズムに自分も関わっている実感がありました。
クロステック・マネジメントでも、教育を通じて、同じようにポジティブな影響を与える仕事に携わっていけると感じられたんです。
 
──他にもEdTechは多数ある中でなぜクロステック・マネジメントに?
小笠原から京都芸術大学の理念や取り組みについて聞いたとき、「これはまさに自分がやりたいことと地続きだ」と強く共感したんです。京都芸術大学は「藝術立国」を理念に掲げ、芸術を通してアジア、そして世界平和への貢献を目指しています。たとえば、東アジアとの連携を強化したり、デジタル技術を活用して多言語対応や教育コンテンツの展開を推進したりと、非常に先進的な取り組みを進めています。
「藝術立国」という理念は、創立者・徳山詳直氏によって提唱されたもので、芸術の力によって平和な世界を実現するという壮大な世界観に基づいています。そして何より驚いたのは、それが今の時代にもぴったりフィットしていること。昔に作られた言葉にもかかわらず、現代的なリアリティと希望があると感じました。
僕自身、在日コリアンというルーツがあり、自分の生き方や価値を社会に還元したいという想いをずっと持ってきました。芸術を通じて世界を平和にするというこの理念は、そうした自分の原点と自然に重なり合ったんです。
また、ビジネスとしてスケールさせていける可能性にも大きな魅力を感じています。
TechAcademy時代に教育分野に関わる中で、従来型のやり方が依然として根強く残っており、テクノロジーを活用すればもっと広く、深く届けられる余地があると感じていました。

「組織そのものをプロダクトに」──COOとして挑む、新しい時代の“会社のかたち”

──ジョインした当初はどんなことをされていたんですか?
ジョイン当初は、Materialの初期構想のフェーズに関わっていました。まだ「構想」しかない状態で、「これをどうプロジェクトとして進めていくか?」というのがテーマでした。小笠原ディスカッションを重ねながら、ふんわりした構想を実際に形に落としていくような動きをしていました。
構想を実現可能なものにしていくために、既に世の中にある類似プロダクトのリサーチや議論を進めるためのモックづくり、またなによりも必要な仲間を集めて最初の土台を作ることをイメージしていました。
 
──現在はどのような業務やプロジェクトに関わっていますか?
現在は、COOとして「組織のあり方」や「会社経営のあり方」そのものを考え、かたちにしていく仕事に取り組んでいます。
働き方の多様化やテクノロジーの進化、AIなどによる生産性の変化により、これまで当たり前とされていた組織形態を根本から見直す転換期に入っていると思います。そうした前提に対して問い直しをし、契約形態からカルチャー、制度設計、コンプライアンスに至るまで、既存の常識にとらわれず、法令を遵守したうえで、より時代に即した形に再構築するという挑戦をしています。
具体的には我々はコレクティブ型組織という組織形態を標榜しており、役割等級や職務等級などこれまでの人事制度の型に依存せず、スペシャリストのスキルを繋ぐような組織体を目指しています。もしご興味があればぜひEntranceBookをご覧ください。
僕自身、これまでずっと事業開発やプロダクトの立ち上げに関わってきましたが、今は「組織そのものをプロダクト」と捉えて、COOとしての役割を担っています。いずれはこの新しい組織運営のあり方そのものを、他の組織にも提供できるようなサービスにまで昇華していきたい。その意味では、まさに「新しいサービスをつくっている」という感覚で取り組んでいます。この構想の起点は、もちろん小笠原の思想に共鳴したことが大きいです。雇用の枠を超えて、個人と組織が本当に対等に関わり合える未来を目指して、先行事例をつくっていきたいと思っています。
 

単なる導入ではなく、“教育の根っこ”から考える挑戦

───クロステック・マネジメントで働く中で、京都芸術大学という舞台ならではの魅力はどこにありますか?
京都芸術大学のように本質的なチャレンジに対して真正面から向き合い、それを実際に許容してくれる場は貴重で他にはないと感じています。クロステック・マネジメントとしても、単に新しいシステムを導入するのではなく、「そもそも、なぜそれが必要なのか」という根源的な問いからスタートする姿勢を重要視しています。
教育機関としての大きな組織を動かすのは簡単なことではありませんが、京都芸術大学では理事長や理事会といったトップ層が、僕らの取り組みに対して深い理解とコミットメントを持って関わってくれます。しかも、「まずやってみよう」と、挑戦そのものを前向きに受け止めてくれる。この環境があるからこそ、クロステック・マネジメントと大学の“本体”と同じ方向を向いて、根本的な変革に挑める。そこに大きなやりがいを感じています。自分たちの提案が、現実の教育の中で実装され、社会に届く手応えを持てるのは本当に得がたい経験です。
 
──現在取り組んでいるプロジェクトを通して、どのようなやりがいや可能性を感じていますか?
いま僕たちが取り組んでいる「学びのかたち」の再構築も、京都芸術大学だからこそ可能になっているんです。たとえば、いま当たり前のように行われている“先生が前に立って講義する”という形式は、実は何百年も前からほとんど変わっていない。でも、それって本当に「学び」の本質を捉えているんだろうか?という問いを、大学として真正面から受け止めているんですね。
「教師とは何か」「学習とは何か」「教材はどうあるべきか」といった問いに、チームで深く潜り込んで議論し、実際にプロダクトとして形にしていく。そんな挑戦が許されていて、しかも大学自体がその挑戦を支えてくれている。この環境で得られるやりがいや成長は、他には代えがたいものがありますね。
教育という、個々人の人生、ひいては社会に大きな影響を与えるフィールドで、まさに変革のタイミングが今だと感じているので、是非一緒にチャレンジしたい方をお待ちしています。